日本はインバウンドを強みとして今後の市場拡大が期待される中、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナと呼称)の影響で訪日外国人の減少など大きな打撃を受けています。
しかし2022年後半になって制限が緩和され始めたことを期に、2023年にはインバウンドが大きく成長するきざしが見え始めたのです。
そこでコロナ後に予想されるインバウンドのトレンドをお伝えしながら、コロナ後に修正された施策や現状(日本の人気やその理由)について解説いたします。
目次
インバウンド観光客はどのくらい増えている?
日本のインバウンド観光客は、コロナの影響で2019年以降には大きく減少しています。日本政府観光局(JNTO)の統計調査で2019年まで3,000万人台だった訪日外国人観光旅行者数は、2020年に412万人、2021年には25万人と大きく落ち込みます。
しかし2022年には規制緩和による観光客増加がみられ、2020年と同規模の383万人にまで回復しました。
この結果は訪日外国人消費動向調査の消費総額にもあらわれており、2022年(10-12月期)の消費総額は、5,952億円と2019年の約5割にまで戻ってきています。
規制がゆるくなったタイミングで消費総額が戻るということは、日本のインバウンドにおける人気や需要がいまだ高いことを示しています。
これは将来的にインバウンド観光客の数や、総額がもとに戻る可能性を示唆しています。
実際に2023年、年間の訪日外客数は2,506万人まで増えています。
また訪日外国人旅行消費額は、5兆2,923億円でこれまでの過去最高だった2019年対比で、9.9%増えています。ひとりあたりの旅行支出は2019年比で+33.8%、21万2,193円となっています。
これまでのインバウンド対策としての取り組み
施策1 戦略的な訪日プロモーション
国では、海外から日本に観光客を呼ぶための計画を行いました。この計画では、海外で日本のことを知ってもらい、たくさんの人が日本に観光に来てくれるようにすることを目指しています。
具体的には、海外で日本の良さを広めるための広告や宣伝を行い、たくさんの人に日本に来てもらうことをサポートします。そうすることで、日本国内でのお金の使い方や地方への観光客が増えることを期待しています。
また、新型コロナウイルスの影響で減った外国人観光客の数やお金を、元に戻すことも大切な目標。そのため航空会社と一緒に広告を出して、再び日本に訪れる人たちの足を後押しすることを考えています。
さらに、新規で外国からの観光客を呼び込むための計画も進めています。一時的なものではなく、継続的な観光を目指しています。外国からの需要がある食事や地域の観光スポットを充実させ、日本の魅力を広めます。そしてデジタルな情報を活用して、より効果的な広告を展開します。
さらにアジアや欧米など、異なる地域ごとに違う広告を展開し、それぞれの市場に合わせた対策を考えています。そして地域ごとに観光客のニーズに合わせたサポートを行います。
施策2 観光人材の育成、研修
国では、地域の観光人材を育成したり、通訳の資格を持つ人たちの研修を行うことが、外国からの観光客を受け入れやすくし、観光を満喫できるような体制を整えるのに役立ちます。
国内では「通訳案内研修」という人材育成の取り組みを行っています。これは、観光庁が指定した期間や料金、方法で行われる研修です。通訳案内士は、5年に1度はこの研修を受ける必要があります。さらに、全国の通訳案内士を対象にして、インバウンド観光客への対応力を向上させるための研修が各地で行われています。これにより、訪日外国人に対するサービスの質を向上させることができます。
また、全国通訳案内士だけでなく、「地域通訳案内士」という資格制度もあります。これは、地域内での通訳案内を担当するための資格で、地方向けの取り組みです。このような取り組みを通じて、アフターコロナの時代に向けて、日本全国のさまざまな観光地への訪問客に対応する準備が整えました。
施策3 観光のICT化
外国からの観光客を増やすための施策のひとつに、観光のICT化があります。
ICTとは「情報通信技術」のことで、近年はAI技術やスマートフォンの利用、通訳の通信技術などが進化しています。観光のICT化を進めることで、外国人旅行者が日本を快適に楽しめるような受け入れ体制を整えることを目指しています。
具体的には空港での無料Wi-Fiや、パソコンの利用サービスを提供することです。また旅行の際に航空券や宿泊先をネットで予約できるようにしたり、「バイリンガルタクシー」を導入したり、スマートフォンアプリを提供したり、多言語ガイドや通訳サービスができるタブレット端末を導入したりします。
たとえば空港で無料Wi-Fiが利用できれば、自国と同じようにネットが使えます。航空券の予約も自国から行えるようになり、日本に到着後はタブレット端末やアプリを使って言葉の壁を超えて楽しめます。これらのサービスは観光業者が今後導入することが期待されています。
施策4 海外の現地行事へ出向く
日本のインバウンド施策は、国内だけでなく海外の現地行事にも積極的に参加しています。海外に住んでいる人たちにとって、地元や国内のイベント以外で日本の観光情報を得るのは難しいことです。
そこで現地のイベントに参加して日本の魅力を伝え、情報を発信しています。
具体的には在外公館が主催するイベントだけでなく、海外で開催される大規模なイベントにも参加し、日本の観光を紹介して集客力を高めようとしています。在外公館のイベントは参加者が限られていますが、地元のイベントに参加すると多くの人々にアプローチできます。そのためこれまで日本にあまり興味がなかった人たちにもアピールできるのです。
また観光を紹介するだけでなく、実際に日本で体験できる「顧客体験」を具体的に示して、海外の人々に興味を持ってもらいます。これらの取り組みにより、日本に訪れる外国人観光客の数を以前の水準まで回復させることが目標とされています。
日本の人気はトップクラス!?
海外旅行などのインバウンドのトレンドは、2022年半ばに行われた「アジア・欧豪 訪外国旅者の意向調査」(2022年度版)でも明らかになっています。調査によれば、日本は観光地としてもっとも人気があります。コロナ後の訪日人気が低下している国もありますが、とくにアジア圏での人気が高く、1位を維持しています。
一方で、順位が下がっている国もあります。フランスは5位に下落しており、インドネシアは順位は変わらないものの人気が低下しています。日本はほかのアジアの国々とくらべても観光名所が多く、独自の伝統的な旅行体験ができることが大きな強みです。そのため、コロナ後も日本の人気がトップのままでいる理由のひとつです。
また欧米豪では日本が旅行先として2位に下がっていますが、これは欧米の国々が早くからコロナの規制緩和を進めて海外旅行を計画する人が多かったためです。逆に言えば日本への観光旅行に対する関心は高まり、以前のような人気を取り戻す可能性もあります。
人気の理由は食、治安、買い物
日本は、外国からの観光客にとって大変人気がある旅行先です。その主な理由は、日本の美味しい食事や安全な環境などが挙げられます。日本には多くの飲食店があり、レストランや小さな居酒屋、デパ地下などでさまざまな食事を楽しむことができます。
特に日本の飲食店は味にこだわっており、「日本人が美味しいと感じる」料理を提供しています。そのため、寿司や天ぷら、ラーメンなどの和食が訪日外国人に人気です。観光客が訪れたときに、どの飲食店を選ぶかは食事の美味しさで決まることもあります。これからも食文化に注目し、インバウンド需要をさらに強化していくことができるでしょう。
また、日本は治安が良いことも人気の理由の一つです。海外では旅行者が犯罪に巻き込まれることが多い場合もありますが、日本は全国的に治安が良く、観光地でも安心して観光を楽しむことができます。
食事や治安のほかにも、日本での買い物や宿泊施設でのおもてなしなども、外国人にとって魅力的な理由となっています。
インバウンド市場が2019年の過去最多を更新できた理由
結果として2023年は外国人旅行消費額が過去最多になりましたが、以下のような要因がまとめとしては挙げられそうです。
要因 | 内容 |
観光施設やイベントの増加 | 日本は世界的に人気のある観光地であり、観光客向けの施設やイベントが増加しています。これによ、外国人観光客はたくさんの体験やアクティビティを楽しむことができます。 |
外国人観光客向けのサービス向上 | 日本の観光業界は、外国人観光客向けのサービスの向上に取り組んでおり、多言語対応の案内やサービス、外国人向けの観光パッケージなどが提供されています。これにより外国人観光客が日本での滞在を、より快適に過ごすことができるようになり、結果として支出が増加しているようです。 |
外国通貨の価値が上昇 | 外国通貨が円に対して高値を維持している場合、外国人観光客は日本での滞在により多くのお金を使うことができます。円安の状況は日本を訪れる外国人にとって、より魅力的な価格を提供しています。 |
食文化やショッピングの魅力 | 日本は食文化やショッピングの魅力で知られており、外国人観光客は日本の料理や地域特産品、ファッション、技術製品などを楽しむためにお金を使います。寿司や、和牛など、日本で楽しめる食事の魅力を享受できていると考えられます。 |
これから市場がさらに広がっていくインバウンド
今回は、日本のインバウンドの状況やトレンドについて、2023年の結果とともにお話ししました。
今後も訪日のインバウンド観光客は増加傾向で、商機を捕まえようと考えている方も多いのではないでしょうか。Guidable Research(ガイダブル・リサーチ)では、外国人向け求人媒体を運営していることで集まっている潤沢なデータを用いて、外国人のニーズを確認することができます。
国内在留外国人や、国内に旅行に来る外国人に調査をしたいという方は、ぜひ一度お問合せください。