【2023年最新】訪日外国人の消費動向調査を分かりやすくまとめました

【2023年最新】訪日外国人の消費動向調査を分かりやすくまとめました
日本では、海外からの旅行やビジネスを目的に訪日する外国人の消費動向調査があります。これを「訪日外国人消費動向調査」と呼びます。調査は2014年(4-6月期)から開始し、新型コロナウイルスの時期を除いて継続的に実施されているのです。
訪日外国人の消費動向調査を実施する背景には、日本が経済活性化のためにインバウンドを積極的に推進してきたことが挙げられるでしょう。新型コロナウイルスで一時期はインバウンドが下がったこともあり、消費も落ち込んでいましたが、最近では改善のきざしが確認できます。
しかし、訪日外国人の消費動向調査は、上手く読み解けばさまざまな情報や示唆だしといった成果が得られますが、使わなければ1から調査して、訪日外国人の情報を集めなければなりません。それを自前で行うには、費用も時間もかかります。そこで、本記事は訪日外国人の消費動向調査を分かりやすくまとめています。
まずは、訪日外国人の消費動向調査の概要を説明し、「訪日外国人旅行消費額の推移」、「国籍・地域別にみる訪日外国人旅行消費額」、「訪日外国人1人当たりの旅行支出額」とその「費目別」、「観光客1人当たりにおける旅行支出額」とその「費目別」の順に解説します。
そもそも訪日外国人の消費動向調査とは?
結論から述べれば、訪日外国人の消費動向調査とは、訪日外国人が国内で消費行動をした際に、どのような費目(支出先の分類)で総額いくら使ったのか(全体傾向や1人あたりの支出額)を知るべく統計的に調べたものです。
調査の目的は、外国人を招いて消費動向を国内の企業や事業者が参考にできるように基本的な資料を作り出し、インバウンドの活性化に生かすことにあります。
具体的には、国内全体でどんな国籍・地域別の人が訪れていて、旅行の理由や費目、使った金額などを明らかにすることです。訪れた場所(訪問地名)を聞くことで、どこの国・地域から日本のどの都道府県・観光地に外国人が来ているかも把握できます。
調査の概要としては、短期(1年未満)の旅行で訪れた訪日外国人旅行者を対象としており、四半期を区切りとして毎回実施しています。対象者が調査票に回答を記入し、次の月には1次速報を出し、4ヶ月ほどで2次速報、次の年の3月末に年間の確報を出しているのです。調査結果は、総額や1人頭を計算し、訪日外国人の消費動向を国籍・地域別や費目別で確認できます。
訪日外国人旅行消費額の推移(2018-2022)
訪日外国人消費動向調査でわかることの1つに「訪日外国人旅行消費額」が挙げられます。消費額には年度別や費目別などありますが、ここでは年度別の推移をまとめることにします。
年度 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2020年 | 2021年 | 2021年 | 2022年 |
総額(億円) | 45,189 | 48,135 | 7,446 | 0 | 0 | 1,208 | 8,991 |
グラフから訪日外国人旅行消費額は、2018年に4兆5,189億円、2019年に4兆8,135億円と微増を続けます。ここ数年のインバウンド施策における外食産業や宿泊(ホテル・旅館等)といった企業・事業者の取組み強化の機運が生じた背景には、訪日外国人の旅行における消費額の増大があるのです。
しかし、2019年までの訪日外国人旅行消費額増加に対して、2020年は7,446億円と1-3月期の結果です。2020年4-6月期以降は新型コロナウイルスの渡航制限などが影響し、調査は一時的に中止となります。中止期間は2020年4-12月の3回分と2021年の1-9月期の間となっており、約2年もの間、訪日外国人消費動向調査は行われていません。
新型コロナウイルスの制限が大きく緩和された2021年10-12月期には再び調査が行われており、調査結果として1人当たり旅行支出等から総額1,208億円と試算されています。この試算された数字は、例年に比べても非常に低い総額で、新型コロナウイルスにおける渡航制限の影響が大きかったことを物語っているのです。
その後、2022年1-3月期に352億円、4-6月期に1,047億円、7-9月期に1,640億円となり、10-12月期には5,952億円と伸びて、2022年全体の総額は8,991億円まで回復します。しかし、4兆以上あった総額が戻ることはなく、2022年の前半も制限と解除の間で一時的に伸びたものです。
総額が伸びるのは本格的に制限解除した結果を反映する2023年以降といえます。事実、2019年に比べても半分程度(50.9%減)の額しかありません。以上が、訪日外国人旅行消費額における全体の推移傾向と新型コロナウイルス前後の比較結果です。
国籍・地域別にみる訪日外国人旅行消費額(2022)
訪日外国人消費動向調査の項目の1つに国籍・地域別にみる訪日外国人旅行消費額があり、総額やその構成比を確認することができます。最新のデータとして2022年(10-12期)を軸に、新型コロナウイルス前のデータと比較してみましょう。
2022年(10-12期) | 2019年(10-12期) | 2019年比 | |
全地域 | 5,952 | 12,128 | -50.90% |
韓国 | 1,075 | 552 | +94.7% |
台湾 | 612 | 1,222 | -49.9% |
香港 | 745 | 956 | -22.1% |
中国 | 461 | 3,893 | -88.2% |
タイ | 324 | 547 | -40.8% |
シンガポール | 301 | 383 | -21.3% |
マレーシア | 127 | 253 | -49.6% |
インドネシア | 122 | 170 | -28.1% |
フィリピン | 107 | 233 | -53.9% |
ベトナム | 201 | 223 | -9.8% |
インド | 49 | 70 | -29.3% |
英国 | 107 | 430 | -75.0% |
ドイツ | 65 | 134 | -51.2% |
フランス | 94 | 216 | -56.6% |
イタリア | 38 | 80 | -52.4% |
スペイン | 27 | 80 | -66.6% |
ロシア | 22 | 81 | -72.7% |
米国 | 689 | 879 | -21.6% |
カナダ | 83 | 209 | -60.3% |
オーストラリア | 233 | 484 | -51.8% |
その他 | 468 | 1,035 | -54.8% |
まず、2022年(10-12期)のデータが示す国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額は、全地域で5,952億円となっており、上位5カ国の内訳は、韓国(1,075億円)、香港(745億円)、米国(689億円)、台湾(612億円)、中国(461億円)の順で多い結果となっています。
上記2022年(10-12期)の結果を考察すると、上位5カ国の変動が激しいことが分かります。特に、例年上位に入っていた中国の大きな順位下落です。その背景として、新型コロナウイルスの影響による中国の外国渡航規制が続いており、消費額の大きなシェアを誇っていた中国からの訪日外国人が大きく減ったことを示しています。
実際、新型コロナウイルスが蔓延する前の2019年(10-12期)は、中国 が3,893億円と一番消費額が多かったことはグラフからも明らかでしょう。逆に、5位だった韓国(552億円)は、渡航者数が新型コロナウイルス後に最も伸びていて、2022年(10-12期)には1位の結果を示したというわけです。
そのうえで、軒並み2019年(10-12期)と比較して、総額や上位・下位の国々では消費額が大きく落ち込んでおり、中国で-88.2%、戦争の影響を受けているロシアで-72.7%、他も50%前後下がっています。
訪日外国人1人当たり旅行支出(2022)
訪日外国人消費動向調査は、訪日外国人1人当たりの旅行支出額も集計しています。国籍・地域別にみる訪日外国人旅行消費額の比較でも確認したように、新型コロナウイルス前後では、支出額が大きく変動しており、特に各国の状況や緩和後の訪日における動きにも国によって違いがあります。