世界的な円安の傾向から、外国人の旅行先として日本が選ばれるケースが非常に増えています。今回の記事では日本に旅行に来る外国人がなぜ日本を旅行地として選ぶのかということと、日本の地方でインバウンド需要を掴んでいる観光地について見てみたいと思います。
目次
日本を訪れている外国人の数は?
2023年に日本を訪れた外国人観光客の数は、約2,583万人でした。
これは前年から大きく増加し、記録的に観光客が多かった2019年の数値の約80%に達しています。
おもな訪問国は韓国、台湾、中国、香港、アメリカで、とくに韓国からの訪問者がもっとも多く、約700万人に上りました。
この増加は日本の観光業が、パンデミックから強力に回復していることを示しており、観光地や関連産業にとって重要な転機となっています。
また円安も観光客増加の一因とされていることは、だれの目から見ても明らかなことでしょう。
世界各国の中から日本が旅行地として選ばれるのはなぜ?
豊かな文化と歴史
日本は数千年にわたる独自の文化と歴史を持ち、古代からつづく寺院や神社、伝統的な祭りなどが観光客にとって大きな魅力です。
京都や奈良のような歴史的な景観を持っている都市は、とくに人気があります。
美しい自然景観
四季折々の自然景観も日本の魅力のひとつです。桜の季節の花見、秋の紅葉、そして冬のスキーリゾートなど、季節ごとに異なる美しさを楽しむことができます。
日本はくり返して訪れる方が多く、季節ごとに大きく変わる景観を楽しみに何度も来日する方が多いのも頷けます。
ちなみに2023年の統計では、日本を訪れた外国人のうち約70%が過去に訪問したことがあるリピーターでした。
グルメ体験
日本の食文化は世界中で評価されています。寿司、ラーメン、天ぷら、和牛など、多様な料理を楽しむことができます。とくに東京や大阪などの大都市では、ミシュランで星を獲得しているようなお店も多く、そのほかにも多くのグルメスポットがあるため、食事を愉しむことが日本を訪れる大きな理由となっています。
安全性と清潔さ
日本は治安がよく、街全体が清潔であることも観光客にとって大きな魅力です。公共交通機関の整備が進んでおり、基本的には観光客が移動しやすい環境が整っています。
ただ一方で人気の観光地や主要都市では、電車やバスが満席になりやすく、席の予約が難しくなることが多いようです。また複雑すぎる鉄道ネットワークも、どの切符を購入するべきか、どのルートを最適か判断するのが難しいという声もあるようです。
ユニークなアクティビティ
茶道、着物の着付け、書道、剣道など、日本独自の文化体験が豊富にあるのも魅力のひとつです。またアニメやマンガの聖地巡礼も、世界中の幅広い世代の観光客に人気があります。
日本の地方でインバウンド需要を掴んでいるサービスは?
1. 石川県金沢市 – ひがし茶屋街
伝統的な茶屋街の観光と体験
金沢市のひがし茶屋街は江戸時代からつづく茶屋街で、外国人観光客に人気があります。ここでは伝統的な日本文化を体験できるサービスが充実しています。たとえば茶道体験や着物のレンタルサービスがありますが、英語対応のガイドツアーが提供されており、外国人観光客にとって利用しやすい環境が整っています。
2. 福岡県太宰府市 – 太宰府天満宮
文化と歴史を活かした観光プログラム
太宰府天満宮は学問の神様として知られる菅原道真公を祀る神社で、多くの外国人観光客が訪れます。ここでは神社の歴史や文化を紹介する英語ツアーが人気です。
また境内での書道や茶道の体験プログラムも提供されており、外国人観光客にとって魅力的なアクティビティが豊富です。
3. 長野県 – 地獄谷野猿公苑
自然と動物の観光資源
長野県の地獄谷野猿公苑では、冬の間に温泉に入る野生のニホンザルが観察できます。このユニークな観光スポットは、外国人観光客に非常に人気があります。多言語対応の案内板やパンフレットが用意されており、訪れる外国人に対してわかりやすい情報提供がされています。
4. 鹿児島県 – 屋久島
自然遺産とエコツーリズム
世界自然遺産に登録されている屋久島は、壮大な自然景観と豊かな生態系で知られています。トレッキングツアーやガイド付きエコツアーが提供されており、とくに英語対応のツアーガイドが外国人観光客に好評です。自然体験を重視したプログラムは、エコツーリズムの観点からも評価されています。
5. 岐阜県 – 白川郷
伝統的な合掌造りの集落
白川郷は、ユネスコの世界遺産に登録されている伝統的な合掌造りの集落です。外国人観光客向けに英語やその他の言語でのガイドツアーが提供されており、また合掌造りの民宿に泊まり、地元の文化や生活を体験することができます。
地域全体での観光インフラ整備が進んでおり、外国人にとっても訪れやすい環境が整っています。
日本人観光客と外国人観光客の経済効果比率
外国人観光客の経済効果は年々大きくなっており、日本人の観光客と比較しても比率が高まっています。
場所 | 総経済効果(億円) | 日本人観光客(億円) | 外国人観光客(億円) |
金沢市(ひがし茶屋街) | 1,000 | 800 | 200 |
福岡(太宰府天満宮) | 1,200 | 900 | 300 |
熊野古道 | 300 | 250 | 50 |
四万十川地域 | 200 | 180 | 20 |
(※上記の数値は2018〜2020年までの地方自治体観光協会の報告書、官公庁の統計データ、観光経済効果に関する学術論文などから出したあくまで概算の数値です)
これらのデータからわかるように、日本の観光地では日本人観光客がおもな経済効果をもたらしている一方で、外国人観光客も重要な経済要因となっています。とくに福岡や金沢などの観光地では、外国人観光客による経済効果が大きく、地域経済に対する影響も大きくなっています。
パンデミックが明けて、今後数年でさらに外国人観光客がもたらす経済効果は増えることが予想されています。