日本は、美しい自然景観や豊かな文化遺産だけでなく、その独自の食文化によっても多くの外国人観光客を引きつけています。とくに、料理に対するこだわりや「おもてなし」の精神が、日本食を特別なものにしている理由のひとつです。
この記事では、国ごとにちがう外国人観光客の味の好みに注目し、各国の代表的な味つけや料理を説明しながら、それぞれの国が好きな日本食を紹介します。
目次
地域ごとの好みの味つけ
ヨーロッパ:素材の味を生かしたあっさりとした味つけ
ヨーロッパの多くの国では、あっさりとした味が好まれます。とくに素材の風味を最大限に引きだす調理法が昔からあり、調味料はできるだけつかいません。
ヨーロッパでは長い歴史のなかで「素材を活かす」という料理哲学が発展してきました。たとえばフランスやイタリアの料理は、新鮮な野菜や肉、魚をシンプルに調理し、その本来の味わいを楽しむスタイルが主流です。塩やハーブ、オリーブオイルなどをつかいながらも、あくまで素材の風味が主役になるように工夫されています。
また地中海沿岸では、あたたかい気候のおかげで新鮮な食材を簡単に手にいれることができるため、保存食にたよる必要がなく、新鮮なままの素材を活かした調理法が発展しました。こうした環境が、あっさりとした味つけを好む文化につながっていったのです。
さらに、最近の健康ブームも大きな理由となっています。とくに、地中海料理は心臓病のリスクを減らすとされ、ヘルシーな食事として有名です。シンプルな調味料で素材の味を引きだす料理法は、健康と美味しさの両立をめざすヨーロッパの食文化を象徴しています。
アジア:複雑な味のハーモニー
アジアでは、複雑な味つけが人気です。甘味、塩味、酸味、辛味、苦味など、さまざまな味覚が組みあわされ、料理に深みをあたえています。
アジアは地域ごとに気候や食材がちがいます。たとえばインドやタイではスパイスが多くつかわれ、中国や日本では発酵食品が料理に深い味わいをあたえています。あたたかく湿度の高い気候では、食材を保存するのがむずかしかったため、発酵食品や塩漬けがつくられるようになりました。
こういった食品は複雑なうま味をもち、料理の味つけによくつかわれるため、アジアの料理に欠かせないものとなっています。
また、アジア各地のさまざまな宗教や文化も、料理に影響をあたえています。たとえば仏教やヒンドゥー教の影響で、ベジタリアン料理や精進料理がつくられました。これにより、肉をつかわない料理でも、スパイスや調味料を工夫して豊かな味わいを引きだす技術が発達しました。アジアでは、複雑な味がもとめられ、そのなかでもとくに調和のとれた味つけが好まれるようになったのです。
アメリカ:こってりとした満足感のある味つけ
アメリカでは、こってりとした味つけが親しまれています。とくに高カロリーで味が濃く、満足感のある料理が好まれます。
アメリカは、世界中から移民があつまる国です。その結果、いろいろな地域の料理が合わさり、進化してきました。イタリア料理のピザやパスタ、ドイツ料理のソーセージなど、濃厚な味つけの料理がアメリカ流にアレンジされ、チーズやバター、ソースがたっぷりつかわれるようになりました。これにより、こってりとした味つけがアメリカ料理のメインのスタイルとして定着しました。
また、アメリカはファストフード文化がとくに発達しており、ハンバーガーやフライドポテトといった、手軽で高カロリーな食べものが多く食べられています。これらのファストフードは、手軽に満腹感を得られるという点で人気があり、濃い味つけや脂っこい料理が一般的になりました。
さらに、アメリカ人はボリュームがあり、食べごたえのある料理をよくつくっています。バーベキューソースやチーズたっぷりの料理、揚げものや濃厚なデザートなど、食事のあとにより満足感を得られるようなこってりとした味つけが人気です。とくにバーベキューソースやキャラメルポップコーンなどの甘さと塩味を合わせた料理は、国民的な料理といっても過言ではありません。
国ごとの好みの味つけと日本食
イギリス人観光客
イギリス人は、シンプルで軽い味つけを好みます。とくに塩味やハーブをつかった料理が一般的で、フィッシュ&チップスやシェパーズパイなどが代表的です。そのため、日本の料理でもシンプルで素材の味が引き立つものが人気です。寿司、塩味の焼き鳥や天ぷらは、そのシンプルさがイギリス人の味覚に合いやすいです。
また、イギリス人観光客は日本の朝食文化にも興味を持つことが多く、シンプルな味つけの焼き魚や味噌汁はやはりおいしいと感じるようです。
イタリア人観光客
イタリア料理は、パスタ、ピザ、リゾットなどのオリーブオイルやハーブ、トマトをつかったシンプルで香り高い味つけが主流です。
そのためイタリア人観光客は、日本の料理のなかでもシンプルな味つけで素材の味を引き立てるものを好みます。とくに寿司、焼き魚やそばなど、あまり調味料をつかわない素材を楽しむ料理が人気です。
また、イタリア人は寿司や刺身のように、素材の鮮度と質が大事な料理にも興味をもっている人が多いです。イタリア料理と日本料理は、シンプルながらも素材を大切にするというところで共通しているため、イタリア人観光客にとって日本食は親しみやすいものと言えます。
ドイツ人観光客
ドイツ人は、塩味や酸味が効いたしっかりとした味を好みます。ソーセージやザワークラウトのように、強い塩味や酸味がある料理が日常的に食べられており、日本でもラーメンや味噌カツ、豚カツなど、ボリューム感があり、濃い味の料理が人気です。
とくにラーメンの深い味わいや、豚カツのサクサクとした食感とコクのあるソースが人気で、日本旅行中の定番メニューとなっています。
フランス人観光客
フランス料理は、バターやクリームをつかったリッチで繊細な味が特徴です。代表的な料理は、ラタトゥイユ、クロックムッシュなどです。このように、フランス人は、料理の素材を生かした上品な味つけを好むため、日本料理の繊細な風味に親しみを感じることが多いです。とくに天ぷらや和牛ステーキのように、素材そのものの味を引き立てる料理が人気です。
フランス人はまた、寿司のようにシンプルな味で素材の質が引き立つ料理も好みます。寿司や刺身、天ぷらは、そのシンプルさのなかに素材の新鮮さや調味料とのハーモニーが感じられるため、フランスの料理とも通じるものがあります。
インド人観光客
インド料理は、豊富なスパイスを使った複雑な味つけが特徴です。インド人観光客は、日本料理のなかでもスパイスが効いた料理や、カレー味のものを好む傾向があります。とくにカレーうどんやカレーパンは、インド人にとっては親しみやすく、かつ日本独自のアレンジが感じられるため、人気のメニューです。
また、インド料理に共通するものとして、料理の深い風味があげられます。日本の出汁をつかった料理も、インド人には新鮮でありながら、その奥深い味が受けいれられています。すき焼きなども、牛肉とタレ、卵黄の組みあわせが人気です。
韓国人観光客
韓国人は、日本料理のなかでも辛味や甘辛い味をとくに好みます。韓国料理は、キムチやコチュジャンをつかった発酵した辛味や、プルコギのような甘辛い味が特徴です。ビビンバやプルコギが代表格です。そのため、日本の焼肉やラーメンなど、ピリ辛の味つけが用意されている料理はとくに人気があります。
日本の唐辛子や七味唐辛子を使った料理、あるいは柚子胡椒のように少し辛味をそえる調味料が、韓国人観光客には受けいれられやすいです。また、牛かつや焼肉店で食べられる和牛は、韓国料理のサムギョプサルやプルコギに似たスタイルで楽しめるため、食べやすくも日本ならではの高級感のある食事を体験することができます。
タイ人観光客
タイ料理の特徴は、酸味、辛味、甘味、塩味がバランスよく組みあわさっていることです。ライムや唐辛子、ナンプラーをつかった料理が多く、トムヤムクン、グリーンカレーなどがあげられます。そのため日本料理でも、酸味が効いた料理や、さっぱりとした味わいのものが人気です。例えば、寿司や刺身は、酢飯や醤油の軽い塩味がタイ人にとって馴染みやすく、また新鮮さを感じさせるため人気があります。
タイのトムヤムクンのように、酸味と辛味が調和した料理を好むタイ人には、酸味の効いた酢の物やすだち入りの冷やしうどんなども人気です。また、主に夏に食べられる冷たいそばやそうめんも、タイの暑さに似た気候のなかで食べることができるため、さっぱりとした味わいをもとめるタイ人に好まれています。
中国人観光客
中国人観光客は、麻婆豆腐、北京ダックなどの複雑な味の料理をよく食べています。中国料理は、辛味、酸味、甘味、塩味、苦味のバランスが絶妙に調和しており、日本観光でも同じくらい複雑な味の料理を食べることが多いです。
とくに出汁をつかった料理や、少しピリ辛の味つけが好まれます。たとえば、出汁やタレにいろいろな食材をつかうラーメンやしゃぶしゃぶは、深い風味が中国人の味覚に合うため、とても人気があります。
さらに、すき焼きやうなぎなど、牛肉や魚を甘辛く味つけした料理も好まれます。中国料理では食材の自然な風味を生かしながら、スパイスや調味料でアクセントをつけるスタイルが多いため、日本料理のシンプルな味つけが新鮮に感じられるようです。
アメリカ人観光客
アメリカ人は、日本食のなかでも甘辛い味つけをとくに好みます。照り焼きソースのような甘みとしょっぱさが絶妙に調和した味は、アメリカ料理においてもバーベキューソースなどで馴染み深く、日本での食事でも親しみを感じやすいものです。たとえば、照り焼きチキンは、アメリカでも人気が高く、日本観光のときにも多くのアメリカ人がオーダーする定番メニューです。
また塩味の強い料理も人気があり、天ぷらや寿司につけるしょうゆなどのシンプルな塩味は、食べやすさと美味しさが評価されています。日本の醤油ベースの料理や、甘辛い味付けのすき焼きもアメリカ人にとって魅力的な一品です。これらの料理は、アメリカ人観光客にとって、日常生活で親しみやすい味のバリエーションとして人気を集めています。
終わりに
国ごとに味の好みがちがうため、日本をおとずれる外国人観光客が楽しむ日本料理もさまざまです。各国の味覚に合うように日本の食文化が進化してきたこともあり、外国人にとって日本食を食べることは特別なものとなっています。日本食の繊細さや豊かな味は、国境をこえて愛される魅力をもっているのです。
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